10分以内で読める梶井基次郎の短編作品

猫の耳というものはまことに可笑しなものである。

私は村の街道を若い母と歩いていた。

私は散歩に出るのに二つの路を持っていた。

ある秋仏蘭西から来た年若い洋琴家がその国の伝統的な技巧で豊富な数の楽曲を冬にかけて演奏して行ったことがあった。

ある晩春の午後、私は村の街道に沿った土堤の上で日を浴びていた。

……らすほどそのなかから赤や青や朽葉の色が湧いて来る。

「たうとう弟にまで金を借りる樣になつたかなあ。

秋は洗ひたての敷布の樣に快かつた。

彼が妻と七才になる娘とを置き去りにして他郷へ出奔してから、二年になる。

文藝部から嶽水會雜誌の第百號記念號へ載せる原稿をと請はれたが、病中でまとまつたものへ筆を起す氣力もなく、とりとめもない「青空」のことなどで私に課せられた責を塞ぐことにする。

「スワン家の方」誌上出版記念會佐藤君と淀野の譯したこんどの本を讀んで見て第一に感じることは、プルウストといふ人がこの小説において「回想」といふことを完成してゐるといふことだ。

子を失ふ話（木村庄三郎氏）書かれてゐるのは優れた個人でもない、ただあり來りの人間である。

『戰旗』彼女等の會話（窪川いね子氏）この月讀んだプロ作品中での佳品である。