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この子

樋口一葉

『この子』は青空文庫で公開されている樋口一葉の短編作品。6,828文字で、おおよそ30分以内で読むことができます。
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30分以内
6,828文字
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書出

口に出して私が我子が可愛いといふ事を申したら、嘸(さぞ)皆樣は大笑ひを遊ばしましやう、それは何方だからとて我子の憎いはありませぬもの、取たてゝ何も斯(か)う自分ばかり美事な寶(たから)を持つて居るやうに誇り顏(がほ)に申すことの可笑しいをお笑ひに成りましやう、だから私は口に出して其樣(そん)な仰山らしい事は言ひませぬけれど、心のうちではほんに/\可愛いの憎いのではありませぬ、掌を合せて拜(をが)まぬばかり辱ないと思ふて居りまする。

初出「日本之家庭」1896(明治29)年1月
底本樋口一葉全集第二卷
表記
旧字旧仮名
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