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たま襻

樋口一葉

『たま襻』は青空文庫で公開されている樋口一葉の短編作品。9,795文字で、おおよそ30分以内で読むことができます。
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30分以内
9,795文字
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書出

上のをかしかるべき世を空蝉のと捨て物にして今歳十九年、天のなせる麗質、をしや埋木の春またぬ身に、青柳いと子と名のみ聞ても姿しのばるゝ優しの人品、それも其筈(そのはず)昔しをくれば系圖の卷(まき)のこと長けれど、徳川の流れ末つかた波まだ立たぬ江戸時代に、御用お側お取次と長銘うつて、席を八萬(まん)騎の上坐に占めし青柳右京が三世の孫、流轉の世に生れ合はせては、姫と呼ばれしことも無けれど、面影みゆる長襦袢の縫もよう、母が形見か地赤の色の、褪色て殘(のこ)るも哀いたまし、住む所は何方、む...

初出「武蔵野 第二編」今古堂、1892(明治25)年4月17日
底本武蔵野 第二編
表記
旧字旧仮名
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