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経つくゑ

樋口一葉

『経つくゑ』は青空文庫で公開されている樋口一葉の短編作品。7,970文字で、おおよそ30分以内で読むことができます。
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30分以内
7,970文字
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書出

※(きず)一※(きず)哀れ手向の花一枝に千年のちぎり萬年の情をつくして、誰れに操の身はひとり住、あたら美形を月花にそむけて、世は何時ぞとも知らず顏(がほ)に、繰るや珠數の緒の引かれては御佛輪廻にまよひぬべし、ありしは何時の七夕の夜、なにと盟ひて比翼の鳥の片羽をうらみ、無常の風を連理の枝に憤りつ、此處(こヽ)閑窓のうち机上の香爐に絶えぬ烟(けふ)りの主はと問へば、答へはぽろり襦袢(じゆばん)の袖に露を置きて、言はぬ素性の聞きたきは無理か、かくすに顯(あら)はるヽが世の常ぞかし。

初出「甲陽新報」1892(明治25)年10月18日~25日
底本文藝倶楽部 第六編
表記
旧字旧仮名
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