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岩魚

蔵原伸二郎

『岩魚』は青空文庫で公開されている蔵原伸二郎の短編作品。1,287文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
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書出

岩魚 ――宋青磁浮紋双魚鉢―― 五月のあかるい昼さがり あまりに生の時間が重いので 私はひとり青磁の鉢を見ている 空いろの底に 二匹の岩魚が見えたりかくれたり すぎる風に水がゆれると 岩魚の背もかすかに紅いろに光る また 水底をよぎる遠い宋時代の雲 ながい時間のかげりをひいて 愁いの淵に岩魚は ねむり 時に目を醒まして はねると いつのまにか蒼天をおよいでいる 鮭 白い皿の上の 鮭の切身

初出岩魚「詩苑」1963(昭和38)年<br> 落日「陽炎」1963(昭和38)年6月号<br> 西瓜畑「詩学」1955(昭和30)年1月号<br> 遠い友よ「中学生のための続・現代詩鑑賞」宝文館、1955(昭和30)年9月10日
底本近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎
表記
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