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岸辺

蔵原伸二郎

『岸辺』は青空文庫で公開されている蔵原伸二郎の短編作品。1,052文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内
1,052文字
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書出

岸辺 冬の日がかんかん照つていた 川岸の枯草の中から首だけ出して 八十九歳の老人が釣をしていた 釣竿をもつたまま 水に映るちぎれ雲の間をおよぐ 冬の魚たちと昔話をしながら 老人は死んでいた ちかちかと 日はかたむいていた 一匹の紋白蝶が よたよたと向う岸に渡つていつた 魚たちが老人を呼んでいた 赤い小さなうきが かすかな波紋をおこして 沈んだり浮いたりしている 不在の人 山すその丘に 古

初出鴉「詩学」1964(昭和39)年1月号<br> 暗号「詩学」1955(昭和30)年10月号
底本近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎
表記
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