衢路

森川義信

『衢路』は青空文庫で公開されている森川義信の短編作品。529文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。

文字数
5分以内529文字
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書き出し

友よ覚えてゐるだらうか 青いネクタイを軽く巻いた船乗りのやうに さんざめく街をさまよふた夜の事を―― 鳩羽色のペンキの香りが強かつたね 二人は オレンジの波に揺られたね お前も少女のやうに胸が痛かつたんだろ? 友よ あの夜の街は新しい連絡船だつたよ 窓といふ窓の灯がパリーより美しかつたのを 昨日の虹のやうに ぼくは思ひ出せるんだ それから又 お前の掌と 言葉と 瞳とが ブランデーのやうにあたたかく

初出「ルナ 6集」1937(昭和12)年9月
底本増補 森川義信詩集
表記
新字旧仮名