ブンゴウサーチ

さらわれた兄よ――残された妹の歌――

槙本楠郎

『さらわれた兄よ』は青空文庫で公開されている槙本楠郎の短編作品。582文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
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5分以内
582文字
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書出

まるで野中の鶏小舎を襲う野犬のように 奴等は一言も吠えず踏込んで来た 寝ていた兄はガバとはね起き 突嗟に雨戸を押倒して奴等を踏みつけた けれど奴等は一人ではなかった すぐ躍りかかる奴があった 兄は組み敷かれた 兄は引っ立てられた 奴等は遂に兄をかっぱらって行ってしまったのだ それは今朝の五時頃だった うす明りの今 藁屋根に下る牙のような氷柱は しずかにとけて唇を指ではじくような しめっぽいやわら

初出「戦旗」全日本無産者芸術連盟本部、1930(昭和5)年3月臨時増刊号
底本日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)
表記
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