ブンゴウサーチ

雪の日

樋口一葉

『雪の日』は青空文庫で公開されている樋口一葉の短編作品。3,372文字で、おおよそ10分以内で読むことができます。
文字数
10分以内
3,372文字
人気
0PV
書出

見渡すかぎり地は銀沙を敷きて、舞ふや蝴蝶((こてふ))の羽そで軽く、枯木も春の六花の眺めを、世にある人は歌にも詠み詩にも作り、月花に並べて称ゆらん浦山しさよ、あはれ忘れがたき昔しを思へば、降りに降る雪くちをしく悲しく、悔の八千度その甲斐もなけれど、勿躰((もつたい))なや父祖累代墳墓の地を捨てゝ、養育の恩ふかき伯母君にも背き、我が名の珠に恥かしき今日、親は瑕((きず))なかれとこそ名づけ給ひけめ、瓦に劣る世を経よとは思しも置かじを、そもや谷川の水おちて流がれて、清からぬ身に成り終りし、其...

初出「文学界 第三号」1893(明治26)年3月31日
底本新日本古典文学大系 明治編 24 樋口一葉集
表記
新字旧仮名
※「人気」は青空文庫の過去10年分のアクセスランキングを集計した累計アクセス数から算出しています。