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月の夜

樋口一葉

『月の夜』は青空文庫で公開されている樋口一葉の短編作品。847文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数
5分以内
847文字
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書出

村雲すこし有るもよし、無きもよし、みがき立てたるやうの月のかげに尺八の音の聞えたる、上手ならばいとをかしかるべし、三味も同じこと、琴は西片町あたりの垣根ごしに聞たるが、いと良き月に弾く人のかげも見まほしく、物がたりめきて床しかりし、親しき友に別れたる頃の月いとなぐさめがたうも有るかな、千里のほかまでと思ひやるに添ひても行かれぬものなれば唯うらやましうて、これを仮に鏡となしたらば人のかげも映るべしやなど果敢なき事さへ思ひ出でらる。

初出
底本日本の名随筆58 月
表記
新字旧仮名
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