小志
太宰治
『小志』は青空文庫で公開されている太宰治の短編作品。214文字で、おおよそ5分以内で読むことができます。
文字数 | 5分以内 214文字 |
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書き出し書出 | イエスが十字架につけられて、そのとき脱ぎ捨て給いし真白な下着は、上から下まで縫い目なしの全部その形のままに織った実にめずらしい衣だったので、兵卒どもはその品の高尚典雅に嘆息をもらしたと聖書に録されてあったけれども、妻よ、イエスならぬ市井のただの弱虫が、毎日こうして苦しんで、そうして、もしも死なねばならぬ時が来たならば、縫い目なしの下着は望まぬ、せめてキャラコの純白のパンツ一つを作ってはかせてくれまいか。 |
初出 | 「朝日新聞 第二二一六三号」1947(昭和22)年11月17日 |
底本 | 太宰治全集10 |
表記 | 新字新仮名 |
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