霧の不二、月の不二
小島烏水
『霧の不二、月の不二』は青空文庫で公開されている小島烏水の短編作品。4,233文字で、おおよそ30分以内で読むことができます。
文字数 | 30分以内 4,233文字 |
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書き出し書出 | 不二より瞰(み)るに、眼下に飜展せられたる凸版地図の如き平原の中白面の甲府を匝(め)ぐりて、毛ばだちたる皺(しわ)の波を畳み、その波頭に鋭峻の尖(とが)りを起てたるは、是れ言ふまでもなく金峰山、駒ヶ嶽、八ヶ嶽等の大嶽にして、高度いづれも一万尺に迫り、必ずしも我不二に下らざるが如し、不二は自らその高さを意識せざる謙徳の大君なり、裾野より近く不二を仰ぐに愈(いよい)よ低し、偉人と共に家庭居するものは、その那辺が大なるかを解する能はざるが如し。 |
初出 | |
底本 | 日本の名随筆58 月 |
表記 | 新字旧仮名 |
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