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天竜川

小島烏水

『天竜川』は青空文庫で公開されている小島烏水の中編作品。14,646文字で、おおよそ60分以内で読むことができます。
文字数
60分以内
14,646文字
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書出

山又山の上を、何日も偃松の中に寝て、カアキイ色の登山服には、松葉汁をなすり込んだ青い斑染が、消えずに残つてゐる、山を下りてから、飯田の町まで寂しい宿駅を、車の上で揺られて来たが、どこを見ても山が重なり合ひ、顔を出し、肩を寄せて、通せん坊をしてゐる、これから南の国まで歩くとすれば、高い峠、低い峠が、鋭角線を何本も併行させたり、乱れ打つたりして、疲れた足の邪魔をする。

初出
底本現代日本紀行文学全集 中部日本編
表記
新字旧仮名
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