ブンゴウサーチ

五月の雉

蔵原伸二郎

『五月の雉』は青空文庫で公開されている蔵原伸二郎の短編作品。2,041文字で、おおよそ10分以内で読むことができます。
文字数
10分以内
2,041文字
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書出

五月の雉 風の旅びとがこつそり尾根道を通る ここはしずかな山の斜面 一匹の雌きじが 卵を抱いている 青いハンカチのように 夕明かりの中を よぎる蝶 谷間をくだる せせらぎの音 ふきやもぐさの匂いが 天に匂う (どこからも鉄砲の音などきこえはしない) 一番高い山の端に陽がおちる 乳いろのもやが谷々からのぼつてくる やがて、うす化粧した娘のような新月が もやの中からゆつくりと顔を出す ――今晩は、

初出風の中で歌う空つぽの子守唄「詩学」1955(昭和30)年1月号
底本近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎
表記
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