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桑の実

鈴木三重吉

『桑の実』は青空文庫で公開されている鈴木三重吉の長編作品。95,044文字で、おおよそ1時間〜で読むことができます。
文字数
1時間〜
95,044文字
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書出

おくみが厄介になつてゐるカッフェーは、おかみさんが素人の女手でやつてゐられる小さい店だけれど、あたりにかういふものがないので、ちよい/\出前もあるし、お客さまもぼつ/\来て下さるので、人目にはかなりにやつて行けるらしく見えたが、中へ這入つて見ればいろ/\あれがあつて、おかみさんは、月末になると、よく浮かない顔をして、ペンと帳面を手に持つたまゝ、茫(ぼん)やりと一つところを見つめてゐられるやうなことがあつた。

初出「国民新聞」1913(大正2)年7月~10月
底本現代日本文學大系 29
表記
新字旧仮名
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