鈴木三重吉の児童文学全作品

女神の死世界ができたそもそものはじめ。

これは昔も昔も大昔のお話です。

むかしむかし、或（ある）山の上にさびしい湖水がありました。

貧乏な百姓の夫婦がいました。

大正十二年のおそろしい関東大地震の震源地は相模なだの大島の北上の海底で、そこのところが横巾最長三海里、たて十五海里の間、深さ二十ひろから百ひろまで、どかりと落ちこんだのがもとでした。

岡の上に百姓のお家がありました。

これは、二千年も、もっとまえに、希臘が地中海ですっかり幅を利かせていた時代のお話です。

むかし、アメリカの或（ある）小さな町に、人のいい、はたらきものの肉屋がいました。

姉妹三人の星の女が、毎晩、美しい下界を見るたびに、あすこへ下りて見たいと言ひ／＼してゐました。

或（ある）山の村に、きれいな、青い湖水がありました。

すゞ子のぽつぽは、二人とも小さな／＼赤いお手帳をもつてゐます。

或（ある）小さなお坊ちやんが、お誕生日のお祝ひに、箱入りのおもちやをもらひました。

インドだのエジプトだのといふやうな熱帯地方へいきますと、蛇使と言つて蛇にいろ／＼のことをさせて見せる、わたり歩きの見世物師がゐます。

ロシアのウラディミイルといふ町に、イワン・アシオノフといふ商人がゐました。

村のとほりにそうた、青い窓とびらのついた小さな家に、気どりやの、そのくせ、お金にかけては、をかしなほどこまかな、おばあさんが、女中と二人で、ひつそりとくらしてゐました。

むかし、ダマスカスといふ町に、イドリスといふなまけものがゐました。

これは、こしらへた冒険談ではなく、全くほんたうの事実話ですから、そのつもりでお聞き下さい。

パナマの運河といへば、だれにもおわかりのとほり、南北アメリカのまん中の、一とうせまい、約五十マイルの地峡をきりひらいて、どんな大きな軍艦でもとほれるやうにこしらへたほりわりです。

トゥロットのお家は貴族で、お父さまは海軍の士官ですが、今は遠方へ航海中で、トゥロットはお母ちやまや女中のジャンヌたちと一しよに、海岸の別荘でくらしてゐます。

トゥロットの別荘のうしろは、きれいな小さな砂浜になつてゐました。

トゥロットのお母ちやまは、朝、いろんな人たちと一しよに、馬車でそとへお出かけになりました。